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ひい・ふう・みい

そうでした。落語の話を忘れてましたね。

その日の最後(とり)は三遊亭夢丸さんの「三文銭」というお噺でした。ある男の出世秘話といった内容です。油問屋の人足から出世して手代(?)までになった男がいた。その男には不思議なクセがあり、時折、懐に手をやり「ひい、ふう、みい」とつぶやく。その噂を耳にしていた店の主人はあるとき男に尋ねると、一文銭を数えているのだという。懐から取り出すと赤い糸でつながれた一文銭が三枚。男の回想が始まる。

男は以前、ばくちに溺れる日々を過ごしていた。あるときとうとう運に見放され逆上した男は、着ていた服を振り回し、「この服をやるから銭をくれ」と裸になって叫んでいた。道行く人は遠巻きに除けて通る始末で誰も相手にしない。と、そこへ若い女が近寄って、銭を渡すとまともになれというようなことを言う。男は女の一言で改心する。言葉を返そうというときに女はいない。以後、男は何かあるたびにこの三文銭を数えることで、そのときの気持ちを忘れないようにしているのだった。

この男は結局店を任されるまでに出世するのだが、続きがある。蒲田の梅屋敷へ梅見に出かけた主人と男は偶然その女と再会することになり、挙げ句、結ばれることになる。結婚した二人はさらに働き、店を持つまでに至るというお話でした。

話の筋はもちろんいいのですが、男が懐で銭を数えるシーンが時折出てきます。「ひい。ふう。みい。」というフレーズがそれなのですが、深い内面性を感じさせる感覚が余韻を感じさせてくれます。懐をまさぐる仕草が聞く側の感覚と交錯するようで妙に生々しい。

もうあれからひと月になりますが、どちらともなくまた行ってみようかという話が出てきます。